虹を掴もう/第5章遠い記憶

第5章 遠い記憶  

翌朝祖母が作った朝食をヤマトも加わり五人で食べ、それぞれ仕事に行った。

『真央!畑に行ってくるから、片付けやって!』と、祖母はいつものように畑へ草取りに行く。

『コーヒー飲む?』

『頂くよ!』

『ね!どこかで以前会ってない?』と、勇気を出してヤマトに尋ねた。

『いや。』

『大学は東京?青山のカフェへ行ってた?』

『東京だけど、男は青山のカフェに行かない!女の子が行くようなカフェのことでしょ。』

『メーカーの接待で行ったレストランかな?』

『いや!会ってない。』

『そ!ごめんなさい。変なこと聞いちゃって。私秘密があるの。小さい時、バスがハイジャックに合って、その時の記憶が消されているの。時々、記憶が蘇るの。昨夜の停電の時、ヤマトの顔を見て見たことがあるような気がして。』

『大変な目にあったんだね。昨夜の友達の様子が気にはなっていたんだ。体調を心配していたでしょ。』

『思い出すような時、倒れちゃうの。父が言うにはパニック障害と医者が診断しているって。脳には異常は無いから精神的負担の記憶からくるようなの。穏やかに過ごすことが一番良いから、田舎が合ってるの。』

『小さい時の事件のこともっと詳しく聞いて良いかな?』

『20年前になるけど、その時の詳しい内容は知らないの。事件は解決して犯人は捕まって過ぎた事なのに大人達は話したがらないの。海外で起きた事件で、日本のニュースもあまり詳しく報道されて無いからパソコンで検索しても出てこないの。』

『どこの国で起きたの?』

『ロンドン!』

ヤマトは頷いた。

『父の仕事の関係でロンドンに住んでて、私は保育園に行くバスに乗ってる時にハイジャックに合い数日監禁された。理由はお金持ちの子供が乗ってて誘拐したみたい。でも、本当は誘拐が目的でバスじゃなく保育園から何人かを誘拐して、身代金と交換して解決した。いろんな説があるの。』

『深い話だね。』

『この事は、仕事仲間の三人に話して協力してもらってる。三人以外!あなたが初めて!』

『協力?って何か調べてるの?』

『父には内緒ね!』

『了解です。』

『心配するから、内緒にしてるの。母はもっと神経質になってて。母は娘の命が狙われるから、何処にも出かけちゃダメって!言うの。自分の事を責めて、幼い子供を保育園に預けた事を後悔してる。でも、今はハワイへ行ってるけどね。』と、笑った。

『命を狙われたことがあるの?』

『そこがわからなくて!気のせいと思うけど。福岡で車事故にあって。私はタクシーに乗って自宅に帰ってて、深夜1時頃突然横からぶつかってきて、タクシーの会社が間に入って事故は処理してくれたんだけど、運転していた人が雇われていたらしく。幸い車は廃車になったけど、私も運転手の方も怪我は軽かったの。』

『雇われていた?』

『事故処理が終わった後に事件として未解決のまま。』

『私はお金持ちでも無いから?重要人物でもないし!』

『その時記憶は蘇ったの?』

『衝撃で気を失っていたから、何も思い出せて無いの。』

『その事故はいつ?』

『18歳の時!父は福岡で事故が起きたので、海外旅行禁止へ!東京へ仕入れへ行くとき父はついてくるし、不在の時は別の人が一緒。彼ができた時は身元調査したり、過保護すぎるの。』

『最近は?無いの。』

『昨年私じゃなく、保育園の時一緒にいた友達が危険な目のあったの。それも二人!父に連絡が来て、一緒にいた友達の親達が協力してる。シークレットで、父が昔の親友と連絡取り合っている。』

『大変だね!島だと安全?』

『島よ!一声かければみんな協力するわ。あまり道を歩いてなくても、外からの侵入者はわかる。船で来るか飛行機、車で動くとレンタカー!密航者でもわかる。』

『スリルのある話だけど、真央さんの安全に協力する自信はある。武道は心得があるから!』

『頼りにしてる!私は全然、この細い体型だもん、蹴りをしても大男には効かないわ!笑えるでしょ。』

『明るい人だね。ネービーな話なのに。』

『生まれた時から、「何か大惨事が起きても狼狽えるな。」と、父や母、おじいちゃんやおばあちゃんに言われたの。』

『生まれた時からって!すごい。』

『耳にタコが出来るってわかる?』

『真央さんて明るいね。君と話していると、僕の悩みなんて小さくて恥ずかしいよ。』

『女々しいって事は男性の特権よ。私はメーカーさんによく言われる。思いっきりがよく決断力がある!って。女にしとくのは勿体無い!って。』

『僕と正反対だね!相性良いかもしれない。』

『これって、プロポーズ?』』結婚する人しか付き合わないの。』

『えっ!』

『真央!昼ご飯の用意はしてるか!』と、畑から帰ってきた祖母が居間にきた。

助かった!私は話し出すとお酒を飲んだ時のように壁を取っ払う時がある。祖母に感謝。でも、ヤマトと話してて楽しく、勢いで記憶喪失のことを話している。カウンセリングしているようにヤマトは聞き上手になり引き出す。

祖母は楽しそうに卵料理を作っている。ヤマトの存在が歳をとっている祖母でも女性となり意識している。振る舞いが紳士的で心地よいのだ。

『ばあちゃんいつもより手の込んだ卵料理ね。』

『あらそう?皿準備して!ウエッジウッドにしてね。映えるから。』

祖母は皿のチョイスが苦手なのに、楽しく台所を動き回っている。

その時電話が来た。

『真央、良く聞きなさい。又、こっちで事件が起きた。これから状況が悪くなるから、気を付けなさい。詳細はメールするから。あとからじいちゃん達にはお母さんからするからね。おじさんには連絡してるから、警備の方は心配はいらないから。』

『わかった、パパも気を付けてね。みんなに早く帰国するように言って。』

『明日日本に着くから、心配しないで過ごしなさい。』

『パパ、ヤマトくんに少し話したの。停電があって、あの真っ暗な空気と静かな一瞬を思い出した。蘇ったの!気は失わなかった。みんながいたから落ち着いていた。三人が遊びに来てくれていたから大丈夫だった。』

『良かった。停電は気になるね。電気屋さんに来てもらいなさい。そして、あのパソコンが得意な月ちゃんに来てもらって調べなさい。』

『わかった。連絡するね。』

続きを読む: 虹を掴もう/第5章遠い記憶