夜明けが早く来ますように
第1章 旅人
冬になると田んぼの隅に藁が積まれそこは遊び場になり、なんとも言えない藁の香りの中で眠りに着いたこともあった。
私の幼い頃の思い出で、今では田んぼも休んでいるところが多く、藁が積まれている風景は珍しい。
藁でできたコースターを見ながらぼんやりと思い出していた。その時メールが届きコーヒーを飲んでいる場合じゃなくなった。
『お父さん何が起きてるの?イランとイスラエルはこれからどうなるの?』
『この状況がしばらくは続くかな。友達とは連絡はとってるんだろ?』
『先週話したよ。でも、今からとってみる!』
『パパはしばらく釣りでもして過ごす。』
『海外買付はお休みにしなきゃね!二人に連絡して帰国するように言っとくね。』
私は海外の商品を買付をして卸しとネットで販売をしている。小さな店舗も経営しながら細々と経営している。店舗の売り上げは観光客が多く数字の大半は卸しの売り上げ。
ネットの普及で海外の商品が手に入りやすい時代でも、販売員の商品説明で購入する顧客を持つ経営者もまだまだ存在してお洒落を追求する需要はそこそこで私の仕事は無くならない。スタッフは男性二人女性一人、取り扱う商品は様々スタッフに任せている。
『起きている?今どこ?イラン大変だね!影響はある?』
『今から寝るとこ、今ロンドンのアパート。街はピリピリ感はあるかな。早めに帰国するね。男性二人はイタリアだよ。真央の依頼のチーズ求めてピエモンテ州に行っている。』
『新規オープンのイタリアンレストランに間に合えば良いけど!ここ日本はのどかだよ。でも、物価は高くなってるから、ますます商品を売るのは厳しくなっている。あまり数量を仕入れないで在庫を持たないようにしなきゃね。』
窓から見える風景はのどかな風景で時間が止まっているように見える。家の横の川は満ち潮で水かさがまし、コーヒーを3杯目を飲む頃になると徐々に川の水が引いた。
アドレナリン放出されて戦闘モードになった。
『いらっしゃいませ。』
客が来て店内を見ている。いつもならそばに行き世間話をするのに、落ち着かず珈琲を飲んだ。塩を選び会計に持ってくると話し出した。
『SNSを見てきたんだけど、占いもしてるって?』
『はい。タロット占いです。』
静かに話し出した男性は別れた恋人の事を復縁できるか?
『しばらくは距離を取る事で新たな展開が起きると出ています。新たな展開にもう一人の女性が絡むようですね!本命は他にいる?別れた原因もこの女性が原因が大きい!と、別れた恋人は悩んでいますね。』
『すごい!本当によく当たりますね!びっくり。』
『復縁は貴方次第だとタロットは出てます。距離を置いてお互いが本当に必要な存在なのか?愛している二人だけど、貴方の心の中に存在する人物について伺って良いですか?過去付き合っていた方ですか?不思議な鑑定で、亡くなってるのでなく、まだ出会っていない!』
『貴方は正直だ。他の占い師だといい加減なことを言って、僕から話を引き出すよ。でも、まだ出会ってはいないでなく、出会ってはいるよ。』
『わー!ごめんなさい!当たらなかったから料金は半額で良いですよ。』と、言って大笑いした。
『この近くで泊まれるとこありますか?』
『貴方魚食べれますか?』
『大好き!魚が美味しいって有名でしょ。』
『じゃ、合格!部屋沢山あるから家に泊まってください。父が魚釣りに行っているから何か美味しいものが食べれますよ。父は話好きだから喜ぶわ!宿代は父の話し相手になってね。ところで、もっと鑑定の続きを話しても良いですか?貴方の心の恋人の存在は純愛ですね。義理のお母様とか?』と、言いながら私は俄然興味が湧いた。どんなタイプが好きなんだろう?先輩に憧れるように好奇心が生まれた。
『うわっ!そういうことにしとこう。夢は壊さない方が良いから。遠慮なく泊まりますね。助かります。』と、彼は優しい笑顔で言った。そこで私は心の中でガッツポーズをした。
『お帰りなさい。何が釣れたの?冷凍のイカで刺身を作るね。今日はお客様がいるよ。泊まるところ探していたから泊めてあげるね。パパと話が合いそうだよ。』
釣りから帰ってきた父親は飛び入りのお客に喜びながら、風呂の準備を始めた。
『和食の味付けです。薄味なので好みでお醤油かけてください。ところで、私はめい。父は辰造で母は海外に旅行中。ここは民宿では無いけど友達も集まると泊まっていくから遠慮しないでね。』
『お店の商品はお母様が買付しているの?』
『何人かで買付して、副業みたいに買付をしている仲間です。母は友達とハワイに遊びに行ってます。あの人は遊びが仕事です。』
風呂上がりの父親はワインとビールを運ぶ。
『君の呼び名はなんと呼べば良いかな?』
『徳永ヤマトと言います。大学で研究をしています。初めまして、お招きありがとうございます。』
『ヤマト君はなぜ娘の店に立ち寄ったんだい。』
『検索してブログを読んだんです。何故か興味が出て、海を見たくなりました。』
『ありがとう!東京で始める方が良い貿易を何故?田舎で始めるか興味が湧いたでしょう。儲からなくても続けることが仕事だと父がいうので従っているだけです。』と、言った後『エネルギーはそこに海があるから!』と大声で言って笑った。
『おー!今日は娘の成長が聞けた。美味しい酒が飲める。』
『私は大阪で祖父が商いをしていて、今も父が後を継いでます。』
私は何故かどこかで会ったことがあるような?初めてでは無い見覚えがあるヤマトさんの顔を見つめていた。
『めいのブログに父親の職業をスパイと書いていただろ!実は海賊だよ!』
『美味しい!この魚の味噌汁。』
『釣れてすぐだから!ヤマトさんのお口にあってよかった。小さな魚でも出汁がよく出てる。ワカメも私がとってきたから美味しいよ。味噌は友達と作ったの。へへ!まだまだ新米!』
『イカの刺身や新鮮なサラダと魚のフライも美味しかった。その後の味噌汁は最高。洋風と和食を混ぜてワインによく合ってました。』と、言って父と話し出した。そこに電話が!
『任務は完了したの?納期は間に合いそう?問題ない?』
『帰国は難しいよ。今警察に捕まった!』
『くそっ!どうしょう!薬物でも買ったの?パパイタリアで二人が捕まってるって!』
『了解!外務省に連絡して弁護士に行ってもらわないとね!ん?』と、父は言った後首を傾げた。
『昔話をしていいかい。僕の友達が弁護士をしていて、同じ人を好きになったことがあって。そいつが君似ててね。急に思い出したよ。お父さんは何をしているの?』
『父は数年前に亡くなりました。母は横浜で雑貨屋をしています。』
『雰囲気が似てるよ。君と同じくらいの年頃に知り合ったからね。よくモテてね、二人で奪い合っていたよ。女性の好みが似てるからね!』と、父は笑いながら彼を優しい眼差しで見ていた。
『聞きたいな!パパの恋バナ。きっと、ママがいたらやきもちやいていたね。』
彼を何故夕食に誘ったのか?おせっかいの私もそういつもでは無い。この都会的な人物はクオーターのような顔立ちで魅力的!
『おじさん、イタリアの二人は大丈夫?』と、ロンドンから連絡が来た。
『悪いことしてなきゃ!大丈夫でしょ。イタリアの弁護士が対応するから心配しなくても良いと思うよ。』
『私もイタリアに行って二人と合流しょうかと思って。』
『じゃ私も行こうかな?情勢は良く無いけど、二人が心配。胸騒ぎもするから!貴方は助けに行って、お願いね。』
『真央!パパがイタリアに行こうか?イタリア語話せるパパが行った方が良いだろ。』
『くそっ!勉強しとけば良かった。あの間抜け二人の尻拭いは人生経験あるパパが行く方が正解!』
『真央ちゃんは何ヶ国語話せるの?』
『日本語!』と、得意げに言って父と笑った。
『この子は小さい時危険な体験から記憶が無くなって、日本語しか話せないんだよ。』
『記憶はだいぶ戻ったけど、ある一部の記憶と言語能力が戻ってないの。不思議でしょ。小さい時せっかく覚えた言葉の記憶が消されて、最初から勉強しなきゃなんて最悪でしょ。』と、明るく話してはいた私だけど父親の前だから気を使った。滅多にこの話題は話さない。珍客の前で他の人に話さないだろうと安心しているのかもしれない。
『まずいこと思い出させてすみません。』
『いいの。今は平気よ。パパが過保護で困ってるの。心配しすぎ!』
『こりゃまいった!ところで君はいつまで滞在予定かね?』
『まだ決めてません。大学の研究はパソコンさえあればどこでもできるので、しばらく五島に滞在予定です。』
『大学ではなんの研究を?』
『ざっくりですが風土の研究を。』
『こりゃまいった!興味を注がれるね。そこで五島だね。』
『こんな話し退屈でしょ。』
父は目をキラキラさせながら話を聞いていた。
『日本中旅行して最後が五島です。小さい時に両親が年末年始に神社にお参りしたり、お盆にお墓参りしたり、クリスマスにはケーキ食べたり、毎日の神様や仏様にお祈りするおばあちゃんの隣で不思議に感じて育ったんです。日本の神話と風土に興味を持ち研究が始まりました。』
『素敵なお話し!父は日本人に生まれたんだから勉強しなさいって言うけど、本読んでても頭に入ってこないの。』
『娘に教えてやってください。私は明日、イタリアに行ってくるから良ければ我が家に泊まっててくれないか?用心棒ということで。誰かに尋ねられたら関係は親戚とでも言ってたら良いよ。そして、仕事を手伝ってる!とでも言っとくと良い。』と、言って次の日父はイタリアに経った。
続きを読む: 虹を掴もう
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