『真央!おきらんか!』祖母の声で起きた。
私と早苗ちゃんは祖母の作った朝食を食べながらヤマトの話をした。ヤマトは早く起きて走りに行ったあと朝食を済ませ散歩へ出かけたらしい。
『朝からジョギングとかカッコいいよね。ファンになる。ところで真央のその服、可愛いね。初めて見る、私もそんなのが欲しい。似合うからいいね。私も痩せよ。今年は痩せるね!』
シンプルなライトグレーのワンピースにライトグレーのカーディガンを合わせてシルバーのロングネックレス。自作のネックレスは自分でも気に入っている。
『ありがとー!足元が裸足だからイマイチだけど。』と、二人で笑った。
『ほら、早く食べて。ばあちゃんは畑に行くから。』と、祖母はりんごをテーブルの上においた。
祖母の作る畑は昔ながらのオーガニック栽培。みかんやリンゴ、広い畑に要らんな野菜や果物を作っている。今ふうに言うとイングリッシュガーデン風に花やハーブと野菜が四季を制作する祖母自慢の畑。
祖母は海外のお手本を真似して作り、台風に負けないように低木のツツジの垣根や、紫陽花は白の集まり、ピンクの集まり、青の集まりと見事。畑といっても家族で食べる量を作り、雑草取りと花の手入れをするのが楽しみの祖母。
私は祖母の作る野菜で育った。ハーブでお茶を飲み、よもぎの時期に団子や餅を作って食べる時は田舎に生まれてよかったと幸せを感じる。
祖母の事を説明すると田舎の人には珍しく、おしゃれが大好きで年をとっても赤の色やオレンジの色の服を着る。人に影でなんと言われても気にしないところが孫娘の自慢。
祖父も祖母のことは気にしない、祖父は真面目な人で外出する時はチノのパンツに白いシャツにジャケットを羽織る。冬だとジャケットの上にダウンを羽織り、チノのパンツの下にラクダのパッチを切る。私はマフラーの色でおしゃれをする祖父が孫娘の自慢。
父が不在の時は祖父に甘えて遊んでもらった。祖父は大工が仕事でなんでも作ってくれた。本棚や小さな椅子、積み木。台風の後の被害を心配して見に来てくれる時の祖父は頼り甲斐があり、屋根の上に登り瓦を見てくれる時の姿はカッコ良い。隣近所もついでに見てあげる優しい祖父。だから、父も安心して旅行に行ける。
今日はミントにレモンと蜂蜜を入れて仕事を始めた。メールのチェックから始めると、イタリアから連絡が来ている。夜中の2時頃だと?起きてるかな?
『パパ?起きてる?』
『起きてるよ!ひと眠りして起きたところだから。二人は解放されてホテルで休んでるから心配しないで。大丈夫だから。じいちゃんは変わりない?』
『うん!元気よ。ばあちゃんも元気。こっちは大丈夫。明日教えてね。安心した。ヤマトくんとじいちゃんは海に行ってる。早苗ちゃんが遊びに来てくれてる。夕方はみんなも集まる。おやすみなさい。』
『おやすみ!』
毎年暑くなる夏の対策にインド綿の素材使ってデザインしている。これが好評で毎年完売の稼ぎ頭で一年の売り上げはインド綿で作っている。工場は東京のメーカーさんに頼み日本で生産して縫製は綺麗。何度洗っても型崩れなく着れる。買いやすい価格はインドで生産してる。
今日のスケジュールはデザインをして過ごす一日と決めて、そして、イタリアで何が起きたか?父からの連絡を待つ。
祖母の畑仕事を早苗ちゃんが手伝っているところへ近づいて、飲み物を渡した。
『ばあちゃんが好きなミントティー持ってきたよ。今年もススキがすごいね。』と、空き地にススキがたくましく増えているのを見ながらため息をついた。
『ここの持ち主に連絡してもほったらかし!迷惑ばかりかけられて周りは大変。』と、祖母はミントティーを飲み始めた。
『私の近所も家が崩れかけてる。シロアリが飛んできて大変よ。持ち主は取り壊すにもお金がかかるからほったらかし!』
『三人で除草剤を撒こうかね!三人でしたら早く終わるよ!』と、祖母が言うと早苗ちゃんが二人でするからと止めた。早苗ちゃんは親戚のように私の家族と付き合っている友達の一人。祖母のことを慕って畑仕事も手伝う。この関係を東京のメーカーに話すと決まって!『田舎は良いね。』と羨む。
自然の摂理に従い五島の自然と共存共栄する風習の中で育った私は恵まれていると感じる。
早苗ちゃんは何も無理する事なく祖母を手伝い、除草剤を楽しくおしゃべりしながら巻いてしまう。とにかくおしゃべりして笑い、底抜けに明るい。
『早苗ちゃん、帰りに野菜持って行きなさいね。お隣からたくさんイカをもらっているから、イカも冷凍庫から取って行きなさい。』
『ばあちゃん!いつもありがとう。今夜の夕食にするね。』
『刺身とゲソは味噌で味付けしたら美味しいよ。玉ねぎはあっとな!』
『玉ねぎはある。ばあちゃんニラももらっていくね。』
『早苗ちゃん!ニラを一緒に入れると美味しいよね。私も大好き!
おばちゃんは喜ぶね。おじちゃんのビールに合う!』
田んぼから帰る人に祖母は声をかけるのが日課で、楽しみの一つ。テレビの普及で外に出る人が少なくなって来たと言って、家の前を通る人を呼び止めては世間話を楽しむ。皆楽しそうに世間話をしながら、魚や野菜を持って来てくれる。
父の友達もよく色んなものを持って来てくれる。母はお返しが無いからと言いながら、コーヒーを入れる。紅茶の時もあり、焼き菓子や団子など甘いものが無ければ、砂糖で煮たリンゴや金柑や蜜柑類を振る舞う。我が家は喫茶店と私は思っている。
この田舎の風習の大好きなところ。
『ハロー!父だよ。愛してるよ。解決したから三人は日本に帰るから。パパは一仕事して帰るから。ママもイタリアに来てるからしばらくこっちにいるから、安心しなさい。』
『パパ!三人は無事ね。何があったの?また、私のことに関係あるの?』
『調べるよ。もう20年も経つのに、また動き出している。そっちは変わった事は無いね。』
『うん。大丈夫!夕方から友達が集まってカラオケ大会。よっちゃんやまりも来るし、男性陣にも声をかけてる。心配しないでね。』
『ママよ!大丈夫?変わった事はない?お金が足りない時はおばあちゃんにお願いしなさい。イタリアで欲しい物があったら買ってあげるけど。バッグとか!』
『ママ、仕事しているからお小遣いは大丈夫。バッグとかいらないから、五島ではバッグは要らないから!』と、私はうるさい母に言って電話を切った。側で聞いていた早苗ちゃんが羨ましそうに口を尖らせた。
『いいね!』
『ここは五島だよ!高級バッグは似合わない。』
『なんか暗いね!イタリアでなんかあった?』
『また、あの事件の動きがあったみたい。イタリアで起きた事件じゃないのに?きっと、一緒にいた人にイタリア人がいたのかな?』と、ミステリー好きの早苗ちゃんに話した。
後から集まる二人もミステリー好きで、マリは本を沢山読み博学で情報を集めることが得意。よっちゃんはスポーツ万能で担当は年齢関係ない人とおしゃべりして昔話の情報集め。パソコンの検索で得られない情報を集めておしゃべりするのが楽しい仲間たち。
同じ小学校からの友達が23歳になる。よっちゃんは結婚して2年保母のパートをしている、マリはスーパーの事務をして結婚を考える彼がいる。早苗ちゃんは恋多き女性で実家が工務店をしていて事務の手伝いをたまにする自由な人。
続きを読む: 虹を掴もう! /第3章 田舎暮らし
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