第15章暗い影
叫び声が響き渡る!
畑に祖父とヤマトが倒れ、辺りは血の海。
渡辺が二人に駆け寄り、『大丈夫、二人は生きている!』と、ホッとして目で3人へ合図をした。
サムが二人の顔に近づけ匂いを嗅いだり、傷を見てる。プロのサムはなるべく触らないように状態を確かめている。救急処置をリーグが始めた。
20分後に救急車が到着するまで、4人のボディーガードは訓練された動きで無駄なく二人の処置に専念する。イシャーは写真を撮り録画を見直し、現場のカメラが切断されていることを検証し、他のカメラを調べる。
発見から20分の間、私は震え呆然としていた。
祖母が外出から戻り、少し驚いていたが、即気丈な祖母に戻り動き出した。
祖母はバッグを取りに行く。
『真央!ヤマトくんの部屋に行き身分証明書や保険証を取ってきなさい。そして、身内の方がわかれば連絡をしなさいね。』と、祖母は低い声で伝えて救急車が到着するのを待った。
祖母は万が一の覚悟を持って目に力が入っている。
私は祖母に言われて探しに行った。ガソリンをカードで払っていた事を思い出した。身分証は確かめて控えている。頭の中で繰り返しながら部屋に入り、荷物とベッドサイドを探す。
肝心の身分証とカードが抜き取られていた。財布にお金は入っている。誰か?盗んだ?と、想像してパニックになっていたら、母が様子を見にきてくれた。
『ママ、身分証が無い。控えていたから事務所に行ってくるね。』と、その場を立ち去ろうとした。
『真央、おじいちゃんは大丈夫よ。きっと助かる。』と、母親は娘に語りかけた。
『うん。おじいちゃんのそばに行ってあげて。おばあちゃんも心細いと思うよ。』
『真央、あなたも大人になったわね。そうね、あの人たちがいるから大丈夫ね。』と、頼りない母親の顔になっていた。
『ママ!しっかりしてよ。事務所から取ってくるから、待ってて!』と、娘は母親の肩を叩いた。
ヤマトの部屋である異変を感じたことを思い出した。
『イシャー!イシャー!』と、私は叫んだ。3人がやって来た。
『どうしたの?』と、イシャーは顔を覗き込む。
『ヤマトの事を調べて欲しいの。』
『どうして?』
『根拠はないけど、おじいちゃんを襲ったのはヤマトだと思う。』
『調べるのは警察に任せても良いんじゃない?』と、母は言う。
『おじいちゃんはああ見えても、武術の心得があるのに、争った様子がなかった。おまけに傷がなかったでしょ。あの血だけど、動物の血かも、そこらじゅうに罠を仕掛けていたから。』と、プロを相手に私は現場の様子を話し出した。
『よく見ていたね。傷はヤマトくんの方があった。致命傷になる箇所を外していた。おそらくおじいちゃんはヤマトくんに襲われ反撃し、おじいちゃんは医学にも精通していたから急所を外してる。でも?おじいちゃんは誰に襲われたのか?もう一人いるはず。おじいちゃんをヤマトくんが襲ったのでなく、その第3者が襲った可能性もある。』と、イシャーが話し出した。
『イシャー、録画には何か映っていなかったの?』と、私が質問したら4人が顔を見合わせた。
『何?』と、聞くと渡辺が説明始める。
『何も異変はなく、犯人は映っていなかったんだ。360度監視して死角はないはず。だけど、敵がITに詳しいと、話は変わる・・・敵にしたくない相手かもしれない』と言って、渡辺はイシャーを見て二人は黙る。
『それは可能なことなの?』と、言ったあと私は思い出した。
『可能ね!侵入の痕跡を調べて何か手がかりは残していない?』と、思い出した海外ドラマのセリフを言った。
『了解!元気が出てきて良かった。大丈夫だよ。僕もプロだから任せて。』と、4人のプロが私を見てうなづいた。
夜になり持ち込んだ何台かのパソコンの前でサムが腕組みをしている。
『今侵入の痕跡を辿っているけど、こいつは腕が良いね。痕跡を残していない。そのことが、痕跡になる。今知り合いに情報を集めてもらっているよ。』と、ため息をつきながらサムが漏らした。
捜査のことは五島全体に噂が広まった。富江の友達は夜になると居酒屋に集まり話題にする。そして、家に帰り家族に伝えて噂をさらに広める。子供から大人までが持ちきりとなる。
買い物に行くと、スーパー、肉屋、魚屋、床屋で話題となり誰か見ていないか?話をして、確かな情報は警察へ知らせる。
郵便局や農協、漁協、市役所!皆の話題が一日も立たないうちにこの事件で持ちきりとなった。
居間に皆が集まり夕食をとっていると、ヤマトの容体が急変して長崎へ搬送する事になったと警察署から連絡が入った。
そして、ヤマトは祖母と暮らしていて、祖母は今施設に入っているらしい。大学の研究員も辞めている事も知った。
電話で話している時に搬送先の長崎大学病院から、ヤマトの体内に毒物が検出された事をやや興奮気味した。
次々に起きる事件に我が家は忙しくなってきた。
私が祖父の見舞いに準備ししていると、祖母が家から出ないように釘を刺した。
『真央!絶対外出しないように。皆さんに泊まってもらいなさい。早く帰ってくるからね!戸締りもしなさい。』と、さすがの気丈な祖母も弱々しく言う。
『ばあちゃん!こっちは大丈夫よ。じいちゃんのそばに行ってあげて。気をつけて、安全運転でね。』と、私は二人を送り出した。
『姫は僕達が守ります!』と、3銃士の外人さんは安心するように送り出す。『大丈夫ですよ!』と、渡辺は手を振る。
『運転気をつけてくださいね。疲れてたら向かいに行きますから連絡ください。』と、グンさんが母に言うと、母は笑顔で応えた。
祖母は病院から帰って来て夕食を食べ、母と祖父の病院福江へ出掛けた。
静かな黒瀬の道路に、我が家から母の愛用のフィアット500が走る。
深い夜が始まろうとしている。
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