盈進に死す//第13章何かが近づく

盈進に死す//13章何かが近づく

『まお!しっかりせんか!』と、抱きしめた後祖母は孫を見つめた。

黒瀬の川が満ち潮と重なり優雅に川上へゆっくりと流れて行くのが見える。

祖父は畑に立ち、その満ち潮により水かさが静かにゆっくり増えていく川を眺めながら、手に鋸を持ち椅子に置いたラジカセから流れるニュースを聞いている。

次に祖父は、『まお!まお、釘を持ってこい!』と、2階の窓に向かって大声で孫を呼ぶ。

2階で下の様子を伺っていたまりあが開けていた窓から顔を出して、

『おじいちゃん、釘はどこにあるの。持っていきますね。』と、祖父に手を振る。

『小屋の中に行けばわかる!ばあちゃんに聞けば!!』と、祖父は手を挙げて大声で答えた。

2階にいたみんなは、この緊張から解放されるキッカケが出来て居間へ移動が出来ると安堵する。

『おばちゃん、何があったの?』と、ゆうこが玄関へ!

『あんたたちは朝ご飯は食べたね。心配せんでいいよ。さ!まおを頼むね。』と、祖母がいつもの溌剌とした笑顔で促した。

ゆうこは少し笑顔が出てうなづいて応えた。

『まりあちゃん、警察に協力してくれる。』と、小屋に釘を探しに行くまりあの側に行き母が頼む。

『はい!何をすれば?』と、まりあは釘を探しながら尋ねた。

『釘はここよ。ウチに泊まってる彼らじゃ無いけど、海外からの旅行者が関係していると警察の人が言ってるの。警察の人は英語がうまく話せないから、あなた達!協力してあげてくれる。』と、母は釘箱を渡してまりあに頼んだ。

『おじいちゃん!釘持ってきました。』と、まりあは畑に行く。

『まりあちゃん、これからここに罠ば仕掛けよう!』と、祖父は有刺鉄線を見てニヤリと笑う。

『楽しそう!おじいちゃん、今から警察に協力して、終わったら一緒に手伝う。きっと、よしきは大好きよ。』と、祖父の笑顔に応えた。

五島にも鹿とウリ坊が出没して、田んぼの苗や、畑の野菜を食べて困っている。今まで無かった被害が生まれた。

台風の被害が少なくなってきた五島に、次への対策!が頭を悩ませる。

『罠ばしかくっとな!』と、車の窓から顔を出して、田んぼへ向かう江尻に住む男性が祖父へ声をかける。

『おー!早よして構えんと。今かー行っとな!』と、祖父は手を挙げて笑って応えてる。

我が家の前の道路は田んぼへ行く道で、皆が声を交わして挨拶をする。賑やかで、大人達は楽しんでる。車から降りてお茶したり、世間話は笑顔になれる。

『橋本のおばさんはまだ見つからんとな!』と、田んぼに向かっている江尻に住む男性は心配そうに話すと、祖父は、

『探してくれたらしいね。おおきにね。』と、丁寧に応えた。

『また後かー!息子と探しとくね。』

『気ばつけてくれれよー。おおきに。野菜ば帰りに持っていけー!』と、祖父はいつものように言葉をかわす。

『帰りによーねー!』と、田んぼに向かおうとしたら表の賑わいに気づいて玄関から祖母が家から表に出てきて、

『花も持って帰れよ!』と、いつもの挨拶をする。

その頃居間では警察とみんなが集まり話し合いが始まっていた。

女性達は台所に集まって、昼の準備をし出した。

『お昼を食べて帰りなさい。』と、母がいつもの笑顔で言うとみんな笑顔で応えた。今家に帰っても落ち着かないだろうから母はいつものようにみんなに言った。

田舎は喫茶店もあまり無い、福江まで20分行けばあるけど、我が家で過ごさせた方が良いといつものように言ってあげたようだ。

今回は娘のことを心配する友達に感謝を含めていた。

その時電話が鳴った。

『パパ!今どこにいるの?私は元気よ。ママに変わるね。』と、まおが母に電話を渡そうとした。

『待ちなさい。パパは元気だよ。今ロンドンにいる。よく聞きなさい、ロンドンのお友達が亡くなったよ。アナの事覚えているかな?』

『え?アナが・・』と、まおは身体が凍り付き血相を変えて2階へ。娘の異変で母が代わり、

『パパ、私よ!どうしたの何があったの・・・』

『ごめん!まおに言ってしまったよ。アナが亡くなった事を話した。まおは覚えているかな?アナの事。だけど、これで7人目だよ。おそらく他殺だろうから、ロンドン警視庁が今調べているところだよ。』

『貴方、まおは自分の部屋に行って側にはいないわ。アナと最近何度も会ってて、詳しいことはまたゆっくり説明するわ。私が話を合わせておくから。でも、まだ記憶はそのままに宝箱に閉まっておきましょう。それよりインド綿の納期を確認してあげて。貴方がインドに行って顔を出してあげないとみなさん会いたがっているわよ。』

まおは電話の後2階の自分の部屋から見える川を見ていた。

今朝アナの夢を見ていたので驚いていたことを父に伝えられなかった。

アナと出会ったのは日本の京都だった。二条城の庭を見ていると、アナが私に日本庭園の質問をしてきて知り合った。

アナも一人で見学していたので一緒に散歩をしてその後二人でお茶をした。その頃のアナは日本語が少しでき、日本の文化を学ぶフランスの大学生。

私は祇園に近い和風旅館田舎亭に予約を入れていたのでその日は急いでいた。久しぶりに会う女将さんに五島のお土産を渡したかったのだ。

次の日神戸に移動するため、再会を約束して別れた。そこから、時々連絡し合いアナが日本に来るたびに再会した。

アナはしょっ中日本に来て、私の出張に合わせて東京や京都、神戸で再会していた。

でも、なぜ?アナは私の前に現れたのだろうか。時々、不思議に思う時があった。

もう、アナはいない。

昨夜の夢のアナは何か言いたそうだった。アナが話そうとした時に祖母の声で起こされた。

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